居心地のよさ
お客様の家づくりをする時に、これだけは提案したほうが善しとする項目や、全部お任せで家を建ててくださいと言われた時に、絶対的に十分な家だと言い切れる事が出来るだろうか。
毎日、建築の事を考えていても、大工仕事で28年叩いていても、まだまだその境地には到達できないものです。
国による省エネルギー住宅が求められている現在、断熱や気密と同時にサッシなどの研究をしているわけですが、北海道から沖縄までの8つの地域に分けての省エネルギー基準の地域分けがされています。
私の住む入間市東町は6地域に入りますが、関東沿岸部の湘南や房総なども同じ6地域に入ります。
以前、仕事で千葉県のいすみ市で暮らしていたことがありますが、同じ6地域でも体幹では全然違う地域に思えるほど暑さ寒さは変わります。
当時暮らしていたアパートは、元々エアコンが付いていなかったのですが、夜過ごすには扇風機1台で十分なほど涼しいし、冬場も車のフロントガラスが凍ることなど少なかったと記憶していますし、屋根に積もった雪をお隣に落とさないようにする雪止めが、どの家にも付いていないのです。
しかも、お隣の青梅市や飯能市は5地域に分類されるらしく、よっぽどこちらの方が近いように感じますが、それにはマニュアルにとらわれない設計計画が必要だと確信していて、日当たりの良いお部屋なのか否かなどを考慮して考える必要があります。
だからと言って過剰に断熱の厚みをあげる必要もないと思いますし、光熱費の差額回収に30年以上かかるような国や企業の戦略に従うのもいかがと思います。
新建新聞社発行の「居心地のよさを追い求めて」を読ませていただいて、建築家の永田昌民氏が考えていた家というものを学ばせていただきました。
住む人の動線は最重要項目であると思うし、明るい部屋が良いと言うけれど、暗い部屋も良いかもしれない、天井は高い方が本当に良いの?低い方が良い環境もあるではないか。
建築コストも考えないでお客様のお金で遊ぶエゴイスト建築家が蔓延る今日この頃、このような建築家が住宅に必要なのか。
これからもお客様にとって何が居心地のよさなのかを感じ取れる大工になりたい。
まだまだ長い求道が続きますね。